
現場で悪口を言ってしまうカメラマン
Journal / Case Study
写真が上手ければ、プロとしてそれでいいのだろうか。
先日、少し残念な経験をしました。
ある撮影案件で、外部のカメラマンに仕事をお願いしたときのことです。
撮影現場で、そのカメラマンが私のクライアントについて、悪口を言っていました。
しかも、現場では周囲に聞こえるくらいの声で、ぶつぶつと不満を漏らしていました。
正直、驚きました。
クライアントの要求が難しかったり、撮影の進め方に納得できなかったりすることは、誰にでもあると思います。
しかし、だからといって、仕事を依頼してくださっているクライアントに対して、そのような言葉を使っていいのでしょうか。
そして、そんな様子を見ていると、
「きっと私自身のことも、どこかで同じように言っているのだろうな」
と感じてしまいました。
実際に何かを言われたと確認したわけではありません。
ただ、そう思わせてしまう時点で、すでに信頼関係に問題が生じているのだと思います。
不満があることと、悪口を言うことは違う
撮影現場では、さまざまな問題が起こります。
スケジュールが押すこともあれば、突然撮影内容が変更されることもあります。
クライアントから難しい要望が出ることもありますし、撮影の進め方について意見が分かれることもあります。
私自身、長年カメラマンとして仕事をしてきましたが、すべてが思い通りに進む現場など、ほとんどありません。
だからこそ、現場では柔軟な対応が求められます。
「それは難しいと思います」
「こういう方法なら対応できます」
「この条件ではクオリティを保証できません」
そうした意見は、プロとして必要です。
むしろ、問題があるのに何も言わず、結果的に良い写真が撮れない方が問題でしょう。
しかし、意見を伝えることと、相手を馬鹿にすることは、まったく違います。
「頭が悪い」という言葉には、問題を解決する力がありません。
そこにあるのは、相手を見下す姿勢だけです。
撮影が終わってから、直接話をしました
私は、現場で感じたことを、そのままにしておきたくありませんでした。
そこで撮影が終わった後、そのカメラマンと直接話をしました。
なぜ、そのような発言をするのか。
なぜ、現場で周囲に聞こえるように不満を口にするのか。
仕事に対する考え方について、話し合いました。
しかし、残念ながら、お互いの考え方は平行線のままでした。
もちろん、人にはそれぞれの価値観があります。
私の考え方がすべて正しいとは思っていませんし、相手にも言い分はあるのでしょう。
ただ、少なくとも私が大切にしている仕事への姿勢とは、大きな違いがあると感じました。
そして、改めて思いました。
写真の技術だけで、一緒に仕事をする人を選んではいけない。
カメラマンは、クライアントより偉いわけではない
カメラマンという仕事には、専門的な知識や技術が必要です。
光を読む力、構図を作る力、機材を扱う知識、現場での判断力。
長年の経験がなければ身につかないものもあります。
だからこそ、自分の技術にプライドを持つことは大切だと思います。
しかし、その専門性が、いつの間にか他人を見下す理由になってしまうことがあります。
「そんなことも知らないのか」
「そんな指示では良い写真は撮れない」
「このクライアントは何もわかっていない」
でも、少し考えてみてください。
クライアントは、写真の専門家ではありません。
だからこそ、私たちに仕事を依頼しているのです。
写真について詳しくないことは、決して悪いことではありません。
むしろ、専門家ではない相手の要望を理解し、それを形にすることこそ、私たちプロの仕事ではないでしょうか。
相手がわからないことを、わかるように説明する。
難しい要望があれば、実現できる方法を提案する。
それがプロフェッショナルとしての役割だと思います。
現場での独り言は、本当に独り言なのか
今回、もう一つ気になったことがあります。
それは、周囲に聞こえるくらいの声で、ぶつぶつと文句を言っていたことです。
本人にとっては、ただの独り言だったのかもしれません。
しかし、撮影現場には多くの人がいます。
クライアント、スタッフ、アシスタント、関係者。
誰かの不満が聞こえてくれば、周囲も気を遣います。
「何か問題があるのだろうか」
「自分たちの進め方が悪いのだろうか」
そんな空気が生まれてしまいます。
撮影現場は、ただでさえ時間との戦いです。
限られた時間の中で、スタッフ全員が集中して仕事をしています。
そんなときに、誰かが不満を漏らし続けていたらどうでしょう。
現場の雰囲気は少しずつ悪くなっていきます。
現場の空気を作ることも、プロの仕事の一部です。
私はそう考えています。
写真が上手くても、また依頼したいとは限らない
私は普段、カメラマンとして撮影するだけでなく、案件によっては外部のカメラマンや映像スタッフに仕事をお願いする立場にもなります。
そのとき、もちろん技術は重要です。
しかし、それ以上に大切にしていることがあります。
それは、
「この人と、また一緒に仕事をしたいと思えるか」
ということです。
どれだけ写真が上手くても、クライアントを馬鹿にする。
どれだけ経験が豊富でも、現場で不満を言い続ける。
どれだけ優れた機材を持っていても、周囲への敬意がない。
そういう人と、安心して仕事を続けられるでしょうか。
私が外部スタッフに仕事をお願いするとき、その人は単に撮影を担当するだけではありません。
LS STUDIOの仕事に参加し、私たちのクライアントと接することになります。
つまり、その人の言動も、スタジオ全体の評価につながるのです。
だからこそ、技術だけでなく、仕事に対する姿勢も大切にしたいと思っています。
プロとしてのプライドと、傲慢さは違う
自分の仕事に誇りを持つこと。
それは、とても大切です。
私自身も、写真や映像のクオリティにはこだわりがあります。
納得できないことがあれば意見を伝えますし、より良い方法があると思えば提案します。
ただ、そこで忘れてはいけないのは、相手への敬意です。
自分が正しいと思うことと、相手を否定することは違います。
専門知識があることと、人として優れていることも違います。
経験を積めば積むほど、知らないことがまだまだあると気づかされます。
そして、自分とは違う分野の専門家から学ぶこともたくさんあります。
クライアントにも、その業界で積み重ねてきた経験や知識があります。
私たちは写真のプロかもしれませんが、相手は別の分野のプロなのです。
お互いの専門性を尊重すること。
それが、良い仕事につながるのではないでしょうか。
私自身も、気をつけなければいけない
ここまで書いてきましたが、決して自分が完璧な人間だとは思っていません。
私自身、撮影現場でイライラすることもあります。
思うように進まないこともありますし、後から自分の対応を反省することもあります。
だからこそ、今回の経験は自分自身への戒めでもあります。
不満を感じたときに、どう伝えるのか。
相手の立場を理解できているのか。
自分の言葉が、周囲にどんな影響を与えるのか。
経験を積んだからこそ、改めて考え続けなければいけないことだと思っています。
最後に。技術より先に、信頼がある
カメラマンは、写真を撮る仕事です。
でも、写真を撮る前に、人と人との関係があります。
クライアントがいて、スタッフがいて、それぞれの役割があります。
一人では作れないものを、みんなで作り上げていく。
私は、そんな撮影現場が好きです。
今回の経験で改めて感じたのは、どれだけ技術があっても、信頼関係がなければ良い仕事を続けることは難しいということでした。
そして、仕事を依頼する立場としても、改めて考えさせられました。
良いカメラマンとは、良い写真を撮れる人だけではない。
クライアントを尊重し、スタッフと協力し、問題があれば建設的に話し合える人。
そして、撮影が終わったときに、
「今日は良い仕事ができたね」
と、みんなで言い合える人。
そんなカメラマンと、これからも仕事をしていきたいと思います。
そして私自身も、そういうカメラマンであり続けたいと思っています。
LS STUDIO|Photography & Film Production
京都を拠点に、広告写真、建築・ホテル撮影、人物撮影、映像制作などを手がけています。
写真や映像のクオリティはもちろん、クライアントやスタッフとの信頼関係を大切にしながら、日々の制作に取り組んでいます。
